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ミシュランガイドで星を獲得した日本料理店に刺激を受けて、和を感じるタコ餃子を作ってみました
ご覧いただきありがとうございます。餃子屋本舗 二代目の楠祐哉(@Kusunoki_Yuya)です。
このコーナーは私が新餃子を作り続けるコーナーです。お店で出すことを目的にしていませんので原価や効率は一切無視し、思いのまま、気のむくままに餃子を作っています。
先日、勉強のために心斎橋にある日本料理 翠さんにお邪魔しました。
こちらはミシュランガイドで星1つを獲得されている実力派のお店です。背筋を正して、真剣に味わってきました。(虫取り少年みたいな格好でしたが…)
丸パク…
今日は、その翠さんで食べたひと皿の料理を丸パク….いえ、インスパイアを受けて餃子を作ってみようと思っています。
その料理はひと皿目に提供された『明石タコ、白ずいき、新生姜、花穂シソ、だしのジュレ』の小鉢でした。
私、ひと皿目から感動させられてしまいました。
流石、だしが半端ない
初っ端ヤラレタと感嘆の溜息を漏らしたのが、だしのジュレです。
味付けは想像するに凄くシンプルです。たぶん、一番だしと薄口醤油だけ。
何が違うって だしです。和食の命ですね。翠さんでは利尻昆布を2時間かけて だしを引いているそうです。
ということで、私もレッツトライ!
極上の一番だしを目指して
今回は尾札部の天然真昆布(なんと献上昆布)を使って、60度で3時間かけて昆布だしを引きました。
別に時間の長さを競ったわけじゃなくて(そういう勝負ではない)、2時間後に昆布かじってみたら旨味が残っていたんです。
翠さんが2時間かけているのも自身の使う昆布に合わせて試行錯誤した結果なのだと思います。
昆布のうまみが段違い
正直、こんなにも変わるのかと驚きました。昆布の嫌なニオイは無いのに、旨味が飛び抜けています。
ワクワクしながら丸なす餃子のときと同じように、昆布を取り出し、85度で鰹節を入れて10秒で濾しました。
うっひょー、ものすんごい旨味。
この出汁の旨味を生かしたい。タコとずいきに吸わせて、餃子の中でジュワっとさせたい。
タコの下ごしらえ
今日のメインはタコちゃんです。あと、ずいき。
そう、組み合わせは丸パク….。(!)っ….インスパイアですッ!
タコは今朝まで生きてたやつを足だけ譲ってもらいました。ご存知ない方もいるかもですが、生タコは強烈にナマ臭いです。
塩で30分かけて揉んでヌメリと臭み取るので、めんどうで みんなが嫌がる仕事なのですが、私は好きです!(あなた変わってるよね)
塩ではタコ臭がなっかなか消えない…
困ったことに、塩を大量にぶちまけて、本気で揉みしごいても、なっかなか落ちないんですよ、タコ臭が。特に吸盤の中がスゴイ…。(夏だから?)
私が使ってる塩は500gで1,000円するので、こりゃたまらんと思い、もうひとつの方法、必殺、大根おろしで攻めてみました。
こういうときに安い塩つかうのって抵抗あるんですよね。(塩のコストは切実)
大根おろしでニオイさっぱり
大根おろしで洗うとアラ不思議、吸盤のニオイも取れてスッキリ爽快。鼻をゼロ距離に近づけても臭くありません!
また、塩だと身が締まりますが、大根だと酵素のお陰でやわらかくなるのもメリット。
しかし、この日、なぜか辛味大根を使用。(冷蔵庫で余ってた)めちゃ手がヒリヒリします。
タコ殴りにして、筋肉をほぐす
タコを更にやわらかくしたいので、出刃包丁の裏でバシバシ叩きます。タコは、ほぼ全身筋肉ですからね。
よく「大根で叩く」といいますが、適度にやわらかいものなら何でもいいそうです。私はラップでぐるぐる巻にしました。
え、めっちゃ固いんやけどw
どれ、どんだけ柔らかくなったのアナタと水餃子にしてみたらビックリ硬くて愕然としました。
タコが全然噛み切れず、最後まで口に残ってしまいます。
これだけ愛情かけてタコを叩きまくったのに、タコに愛は通じませんでした。
タコをやわらかくする旅に
いさぎよくボイルタコ使いなさい!
そう思う方もいるかもしれませんが、ボイルタコって意外と添加物まみれなんです。(言い方)
賞味期限を長くするために芯まで茹でてあるから硬いし、それを再加熱するとゴムのようになるので餃子には不向き。
他に方法は無いかと悩んだところ、低温調理を試してみることにしました。
めっちゃ、やわらかいや〜ん
すると、一転。タコやわらか。出汁も吸って旨味も倍増でした。
けど、もう少し柔らかくしたいので50度45分にして再チャレンジ。
思ったとおり、いい感じになりました。見た目も全然ちがいますね。これなら餃子の中でも、スッと噛み切れます。
いざ、ずいきの下ごしらえ
昔から、ずいきは餃子に入れると面白そうだなと思っていました。なぜって、すっごい出汁を吸うからです。
反対にタコは味が乗りにくいので、それをずいきが上手く補ってくれると思いました。
だから、丸パクリの組み合わせですが(ついに、言っちゃった…)、そのままにしました。
力の限り、ずいきの水分をしぼりとる
茹でたずいきを搾って水分を出します。
これでもか!っていうほど、頑張って搾り、濃ゆい出汁をガンガン吸わせます。
一番だしのジュレを作る!
ここまできたら、ジュレもパクリます。(だんだん露骨になってきた)
せっかくの出汁を薄めたくないので、うす口醤油のみで味つけしました。これでウットリするほどの味になるのだから、出汁って本当に重要です。
いよいよ大詰めです
さて、完成まで後もう少し。
うす皮に餡をのせて、タコとずいきをのせて、餡でサンドイッチ。蒸し餃子にして仕上げます。
ジュレにダイブして、いざ実食!
ひと口ちゅるり。だし感がすごく主張されています。
タコは柔らかでスッと噛み切れて、吸盤のコリコリがアクセント。
ずいきのシャキシャキ感が程よく感じられ、噛むほどに だしの味が滲み出てきます。
だしのジュレの温 / 冷 のコントラストも面白い。
これは….
うまいゾ!
その花に意味はあるのか?
餃子の上に散らした花穂シソが美しいですね…。これも完全に翠さんのパクリです笑
僕が、あのひと皿で感動したのは、こうした花穂シソが飾りだけじゃなくて、味として欠かせないものに昇華されていたところです。
その日のコースに こうした飾りは幾つもありましたが、どれひとつとして必要不可欠なものでした。その技のひとつひとつに惚れ惚れします。
私もいずれは、その域にまで辿り着きたい。
今回は完全な模倣でしたが、これを繰り返すうちに自分だけの餃子が生まれると信じています。(最後マジメやんか…)
餃子屋本舗 二代目 楠祐哉
この記事を書いた人
餃子屋本舗 二代目店主。中華料理店の長男として1986年に生まれ、幼い頃より厨房で遊びながら料理を覚える。元々はジャズのプロベーシストだったが、リーマンショックの影響で経営が傾いたことを機に跡継ぎに。音楽への情熱を餃子に全て注ぎ、自分だけの餃子を目指して日々奮闘中。頭に浮かぶのはメロディよりも味覚の方が発想豊かだと気づき、近頃は餃子が天職だと感じている。(Twitterでは試作の様子をリアルタイムでつぶやいています)