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和食の魚料理の代表格「西京漬けの真鱈」で餃子を作ってみました
連載「新餃子の開発記」三作目は真鱈を使った和餃子です
御覧いただきありがとうございます。餃子屋本舗 二代目の楠祐哉です。
この企画は、私が新餃子を開発する普段の様子を公開するものです。今回のテーマも前回に引き続き「和餃子」です。
最近は日本料理を餃子に取り入れようと、割烹の名店に足を運んだり、日本料理の専門書を読み込んでいます。
今回は実験的な意味も込めて、和食の魚料理の代表格「鱈の西京漬け」で餃子を作ってみました。
西京漬けにした真鱈は餃子にできるのか?
正直なところ、今回の餃子は味のイメージが全く沸きませんでした。
前例が無いですし、作っても不味い可能性も十分にあります。
けれど、それでもいいと私は思っています。失敗の中には次へのヒントが潜んでいるはず。その蓄積が新しい餃子を生み出す力となるはずです。
まずは手探りで、日本料理の何を餃子に取り入れられるのかを見つけることが大切です。
深海魚である「鱈」は下ごしらえが大切な魚です
まずは鱈に塩をあてて1時間ほどおきます。
鱈はニオイの強い魚として知られていますが、その原因は「トリメチルアミンオキシド」という成分にあります。
この成分は魚が海水圧に耐えるために必要なもので、深海魚である鱈には他の魚よりも多く含まれています。
だから、しっかりと塩を当てておいて、余分な水分を取ることが鱈を扱う上でとても大切です。
白味噌の風味をまとった、鱈の西京漬けを餃子に仕立てる
鱈を漬け込む味噌床を作ります。
京都の白味噌、甘酒、煮きった日本酒を合わせました。普通は、みりんを入れますが、あまり甘くしたくないので甘酒だけにしています。
写真は味噌床に2日間漬けた鱈です。1日だけで良かったかも…。ちょっと身が締まりすぎています。
さて、肝心の味はどうでしょうか。
恐る恐る、焼餃子にして食べてみた
とりあえず焼餃子にして食べてみました。
ダメかと思いましたが、これが中々面白い。白味噌の風味がフワっと鼻を抜けます。
また、心配していた”身の締まり”が逆にいい仕事をしていました。
噛んだ瞬間は食感を強く感じるのですが、鱈は身がやわらかく水分も多いためか、ホロっと崩れて、だし入り餃子餡と溶け合って調和します。
想像とは全然ちがう。これだから餃子作りは面白い。
水餃子にすると、あっさりとして”いい塩梅”に
焼餃子でも悪くなかったのですが、西京漬けの風味が強かったので、水餃子にしました。
茹でると水分を含むので味が落ち着くと思ったからです。
試しに食べると、思ったとおり、西京漬けの鱈には焼餃子よりも水餃子が似合います。
しかし、どこかワンピース欠けたような”ぼやけた味”です。引き締める何かが必要です。
頭の中を探すと、山椒の新芽である「木の芽」の爽やかな風味が浮かびました。
鱈の水餃子を引き立てる”なにか”を探し求めて
あいにく「木の芽」はどこも売り切れ。諦めて青果売り場をウロウロします。
『鱈の西京味噌の味と調和して、引き立たせるものは他に無いだろうか…』
考えごとをしながら歩いていると、パッと目の前に大根が飛び込みました。人気がないためか、辛みのある下の部分だけが売り場に残っています。
『….辛みの利いた大根….』
木の芽と同じではないですが、辛みのある大根おろしには私が木の芽に求めた”爽やかさ”があります。
ただ、それだけだと何か違う…。そこで閃いたのが「梅」でした。
咄嗟の閃きは餃子の味を完成させるか
料理をしていると、こういう体験をすることがよくあります。
格好良くいうと「降りてきた」というやつ、ダサくいうと「思いつき」です。
私の経験上、こういう閃きは、正解のことが多いのです。
思いついたままに梅干しを裏ごしして、水気を切った大根おろしと和えて「辛味みぞれ梅」を作りました。
夏らしく爽やかな真鱈の水餃子が完成
どうなるかと楽しみに試食をしたら、パズルの最後のピースがはまり、一気にまとまりました。
西京漬けは日本人に馴染み深いためか、それまでは少し古ぼけた味に感じられたのですが、「辛味みぞれ梅」を添えることで、一気に洗練されました。
ちょっぴり甘めの白味噌、鱈の旨味と香り、辛みのある大根おろし、南高梅のすっぱさと甘みの取り合わせたが夏を感じさせます。
うん、いい餃子になりました。
お店で出すには、まだまだ微調整が必要ですが、和餃子の方向性として、とても良いものを感じました。
最後まで御覧いただきありがとうございました。Twitterでは試作の様子をリアルタイムでツイートしています。もし宜しければ覗いてみてください。
餃子屋本舗 二代目 楠祐哉
この記事を書いた人
餃子屋本舗 二代目店主。中華料理店の長男として1986年に生まれ、幼い頃より厨房で遊びながら料理を覚える。元々はジャズのプロベーシストだったが、リーマンショックの影響で経営が傾いたことを機に跡継ぎに。音楽への情熱を餃子に全て注ぎ、自分だけの餃子を目指して日々奮闘中。頭に浮かぶのはメロディよりも味覚の方が発想豊かだと気づき、近頃は餃子が天職だと感じている。(Twitterでは試作の様子をリアルタイムでつぶやいています)