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リベンジマッチ!牡蠣のシャンパン餃子
ご覧いただきありがとうございます。餃子屋本舗 二代目の楠祐哉(@Kusunoki_Yuya)です。
このコーナーは私が新餃子を作り続けるコーナーです。お店で出すことを目的にしていませんので原価や効率は一切無視し、思いのまま、気のむくままに餃子を作っています。
今回のテーマは前回に引き続き、牡蠣を使った餃子です。
前回の雪辱を果たす
前回挑戦した牡蠣餃子は大失敗でした。
わざわざ新鮮な岩牡蠣をさばいて餃子にしたけれど『酢牡蠣の方が美味しいやん!』と自分でツッコんで凹んでいました。
私は思うのです。酢牡蠣の方が美味しいなら、餃子にする意味は無いと。いい素材を使うのですから、餃子にしたときに牡蠣が最も光っていないと意味がありません。
餃子と生食では土俵が違うのは百も承知ですし、前回作った餃子だって『これはコレであり』という見方もできるのですが、それだと私の性格が納得してくれないのです。(うわっ、めんどくさっ)
牡蠣餃子の問題点は火入れにあった
『前回の餃子は何がだめだったの?』そう聞かれると答えは一つです。
それは、味うんぬんじゃなくて、火入れです。
牡蠣は水分が多いので加熱時間が長いと身が縮んでしまい、生牡蠣や霜降り牡蠣が持つトロっあふれるジューシーさがなくなります。
だから、「焼・揚・蒸・茹」のどれにしても、牡蠣が台無しになったのです。
冷静に私無理なんじゃって思ったんです
とはいえ、基本の調理法を封じられては流石にお手上げです。
だって、私の理想は餃子の中の牡蠣がレアなことです。でも、冷静に考えて、そんなの出来ないんじゃって思いました。考えてもみてください。餃子は、どんなに短くても3分は加熱しますから。
なのに、中がレアなんて、手品じゃないし、それは不可能というものです。
餃子の牡蠣をレアにするためには…
頭を悩ませていると、ある方法が浮かびました。
牡蠣を薄皮で包んで高温1分で揚げれば、中はレアじゃないかと。
餡には先に火を通しておけばいい。そうすれば、外サクサク、中トロっと溢れるレアな牡蠣餃子が出来るのでは….
試したことのない方法ですが、挑戦する価値はありそうです。
外サクッ、中とろっとろのイメージ
ただ、ひとつ大きな問題があります。
先に餃子餡を加熱すると、鶏そぼろみたいになって包めません。
皮からポロポロと餡が落ちてしまいます。となると、餡は「あんかけ」のようにトロミをつけて水分をまとわせないといけません。
だんだんと条件が複雑になってきました。こ、これ、本当に出来るのかしら?
ひねり出した2つの案
頭をこねくり回していたら、この条件を満たす餃子が2つ沸いてきました。
ひとつは、鰹と昆布の一番出汁で餃子餡を「あんかけ状態」にする方法。揚餃子にしたら、牡蠣と共に出汁が絡んだ餡がトロっと出るイメージです。
もうひとつは、フランス料理で最高の組み合わせと呼ばれる、牡蠣とシャンパンを合わせるもの。生クリームを合わせてトロっとさせて、バターで繋いで餡を固めます。
お店で出すとしたら前者(原価的に…)ですが、今回は敢えて普段できない後者を選びます。果たして、上手くいくのだろうか…。
牡蠣シャンパン餃子をつくる
まずは市場で買った新鮮な牡蠣を殻から開けて大根おろしで洗います。そして、登場。おシャンパン。御シャンパン。
これをどうするのって思うかもですが、エシャロットを加えて煮詰めます。いや〜贅沢ですね、え?どれくらい煮詰めるかって?
400ccが50ccになるまで煮詰めるんです。(!)
めっちゃ、もったいない!
私も専門書を二度見しました。シャンパンのボトル半分以上を鍋にドカドカと注いで、ヤクルト以下の量にするなんて、正気ですかと。
でも、こういう所をケチるとダメなんですよね。だから、断腸の思いで決行しました。
どうしても気になる原価
私が買ったシャンパンはセールで3,500円。750ml入りなので1mlあたり4.6円….×400mlで、なんと50mlに1,866円の原価がかかります。すると、販売価格は原価40%で奉仕したとしても….もっと高いシャンパンだったら….
ええーい、いいかげん銭勘定はやめなさい!
シャンパーニュ 沸騰
まず普通の会話では使いませんが『シャンパンが沸きましたよ』と社員が呼んでくれました。
そしたら、牡蠣の身を黄金の液体にサッと通します。普通は沸騰した湯でやる霜降りですが、牡蠣の旨味を損なわないようにシャンパンの中で行いました。
牡蠣には火が入って欲しくないので、スグに氷水に落として、引き上げます。
餃子餡と生クリームを入れて完成
鍋のシャンパンが儚くも1/8量まで煮詰まったら、生クリームを入れて煮立たせます。
そしたら、エシャロットを取り除いて餃子餡を加えて更に火を入れて塩コショウで味を整えます。
黄金の液体に餃子餡を入れるなんて…
「餃子餡?」おい、チョっと待て冗談じゃないと思った方もいらっしゃることでしょう。
もちろん、普通の餃子餡だと残念なことになると思います。
うちの「だし入り餃子餡」は元々こうした調理方法と調和するように作っています。他の素材と組み合わせると旨味の相乗効果が起こるので、だから、逆に美味しくなるんです。(ほんとかよ)
シャンパン餡にもうひと手間
このままでは餡がシャバシャバで包めません。
ブールマニエ(小麦とバター)で固めようと思ったのですが、せっかくなのでフレンチのソースのひとつである「オランデーズソース」を加えて粘度をもたせました。
バターの上澄みと卵黄を加えて作る、気品のある香りのソースです。
おフレンチな餃子餡の完成
オランデーズソースにシャンパン・生クリーム・餃子餡を合わせたものが今回の餡です。
ここまできたら後はもう簡単。うす皮に餡を伸ばして、なるべく牡蠣をたっぷりと入れて包むだけ。
だれも包めない餃子
この餃子はメッチャクチャ包みにくいです。牡蠣は柔らかいし、皮は薄い。そして餡はトロトロ。
左側のヒダを作ったら、右側から牡蠣がコンニチハ。右側の牡蠣をエイヤと押し込んだら、今度は左から牡蠣がコンバンワ。その無限ループがはじまります。こりゃ職人さんキレるわ。
いざ、高温で1分揚げ
後は揚げるだけです。うちはオリーブオイルを揚げ油にしているのでヘルシー。
180度で1分泳がせて終わり!皮がサクサクになったら速攻で引き上げます。
中からレアな牡蠣がとろんとろん
外はサクサク、で、で、で!!主役の牡蠣、もうね、トロトロのレアなんです。
シャンパンの上品な酸味が心地よく広がってオランデーズソースがまろやかに優しく包み込みます。
私が牡蠣で最も表現したかったジューシーさがバッチリ表現できています。これが私の答え。牡蠣を活かす餃子です。(ドヤ)
おい店主、これは餃子なのか!
たしかに!(否定しなさい)でも、食べると意外と餃子なんですよ。
賛否両論あるでしょうけど、私としては収穫があって大満足です。(じこまんバンザイ!)
個人的にはね、たとえ、餃子らしくても牡蠣を活かせなかったら意味がないと思うんですよ。
だって、食べたら、こんな顔になるんですよ。
現実的には店では出せないけど
やっぱり、美味しいが正義ですよ。
ただ、現実的に普段は出せませんね。厨房パンクしますね。忙しいときに『すみません!シャンパン干上がって焦げになりました!』って言われたら冷静ではいられない。
いずれ周年イベントをやりたいなと思ってるので、その辺りに限定でお披露目しましょうかね。
告知はひっそりTwitterでやるので、もし良ければフォローしてください!(まさか、それが目的では)
という訳でリベンジ完了!次は明石タコを使って冷製水餃子を作ろうと思っています。こちらも是非お楽しみに。(こら、逃げるな!)
餃子屋本舗 二代目 楠祐哉
この記事を書いた人
餃子屋本舗 二代目店主。中華料理店の長男として1986年に生まれ、幼い頃より厨房で遊びながら料理を覚える。元々はジャズのプロベーシストだったが、リーマンショックの影響で経営が傾いたことを機に跡継ぎに。音楽への情熱を餃子に全て注ぎ、自分だけの餃子を目指して日々奮闘中。頭に浮かぶのはメロディよりも味覚の方が発想豊かだと気づき、近頃は餃子が天職だと感じている。(Twitterでは試作の様子をリアルタイムでつぶやいています)