ブログ
Blog
銀鮭を粕漬けにして”ふわふわ餃子”を作ってみました
連載「新餃子の開発記」二作目は銀鮭を使った和餃子です
御覧いただきありがとうございます。餃子屋本舗 二代目の楠祐哉(@Kusunoki_Yuya)です。
この企画は、私が新餃子を開発する普段の様子を公開していくものです。
私は毎朝、料理の専門書を眺めながら、この調理方法で餃子を作れないかと妄想を繰り広げています。
世界には様々な餃子があって、中にはサワークリームで味わうもの、香辛料が利いたもの、トマトソースで味わうものなど実に個性豊かです。
日本では「餃子=焼餃子」のイメージが強いですが、まだまだ餃子は可能性を秘めた料理だと私は思っています。
酒粕漬けにした銀鮭を使ってみました
まずは粕床を作ります。酒粕は意外と保存料が入っているので表示をよく見て、米と米麹だけのものを選ぶと味が良くてオススメです。
粕床のレシピは、酒粕、煮切り酒、水飴を少し、あと塩をひとつまみ入れました。旨味を加えたいので鮭を昆布で挟んでいます。普通なら、みりんや砂糖を使いますが、今回は甘みはほんのりでいいので省きました。
銀鮭に塩をあてて、余分な水分を抜いて臭みを取ってから漬け込みます。私は二日間くらいがベストだと感じました。
まずは包丁で叩いた銀鮭を入れて蒸し餃子にしてみました
この時点では、どんな餃子にするか決めていません。でたとこ勝負です。
まずは、だし入り餃子餡と和えて蒸し餃子にしてみました。うす皮から銀鮭のピンクが透けているのが綺麗ですね。
食べてみると…『うーん、ボソボソしていて微妙』です。ただ、酒粕の風味は面白い。他にも焼餃子、揚餃子も食べてみましたが結果は同じでした。
もちろん、この程度で商品になるとは思っていません。大体の感触が掴めたので、この特性を活かすために方向性を大きく変えることにしました。
思い切って「すり身」にして、しんじょ風にしてみました
この餃子の問題点は風味は良いのですが、食感が悪い点でした。
このままでは、どうすることも出来ないので、すり鉢にあてて、長芋、卵白、水溶き葛、だし入り餃子餡を入れて、塩と薄口醤油で味を整えました。
和食でいう「しんじょ」の作り方に似ていますね。実は、はじめて取り入れる手法です。
ちなみに、フードプロセッサーはラクですが、機械熱で味が落ちるので私はなるべく使いません。
一転して”ふわふわ”の食感に
うん、さっきまでのボソボソ感がなくなりました。
フワっとした食感になって、酒粕の風味もマイルドになって上品に香ります。
少しアクセントが欲しかったので、餡に角切りの長芋と三つ葉の軸を忍ばせました。
今、書いてて思いつきましたが、薄口醤油じゃなくて、出汁で割った鮎醤油を入れれば良かった。その時に気づけなかったのがちょっと悔しい。
かなり良くなりましたが、このままでは店では出せない
最初のボソボソ餃子と比べると見違えるほどよくなりましたが、このままでは印象の薄い餃子です。
どうしようかと考えあぐねていたら、パッと閃きました。『そうだ、銀あんをかけよう!』
銀あんとは、一番だしに薄口醤油と塩で味を整えて、水溶きの吉野葛でとろみをつけたものです。
よく料亭の茶碗蒸しにかかっていたりするあれです。
銀あんと絡めると、いい餃子になりました
うん、かなり良くなりました。ここまでしないと印象に残る味にはなりません。
銀あんに使った一番出汁は、前回のナス餃子と同じように、昆布を水から60度で1時間煮出し、鰹節は85度で10秒間で引いています。
天然真昆布と京都の鰹節を贅沢に使ったので旨味も香りも十分です。
薄味ですが、出汁の香り・旨味が際立ち、これがあるのと無いのとでは完成度がまるで違います。
納得のいく和餃子が誕生しました
最初は不安でしたが、和餃子として面白いものができて大満足でした。
この「しんじょ風」のレシピは他にも応用が効きそうです。魚でも、鶏でも、すり身にしてフワフワにして食感が立つものを加える。
そして、銀あんでも鼈甲(べっこう)あんでもいいし、アオサ塩で食べても美味しそう、アイデアは無限です。
私は、いずれ「季節の餃子フルコース」をやりたいと思っていて、今はレパートリー不足ですが、今回の挑戦でたくさんのヒントが得れました。目標に一歩前進です。
最後まで御覧いただきありがとうございました。Twitterでは試作の様子をリアルタイムでツイートしています。もし宜しければフォローお願いします。
餃子屋本舗 二代目 楠祐哉
この記事を書いた人
餃子屋本舗 二代目店主。中華料理店の長男として1986年に生まれ、幼い頃より厨房で遊びながら料理を覚える。元々はジャズのプロベーシストだったが、リーマンショックの影響で経営が傾いたことを機に跡継ぎに。音楽への情熱を餃子に全て注ぎ、自分だけの餃子を目指して日々奮闘中。頭に浮かぶのはメロディよりも味覚の方が発想豊かだと気づき、近頃は餃子が天職だと感じている。(Twitterでは試作の様子をリアルタイムでつぶやいています)