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岩牡蠣を味噌漬けにして牡蠣餃子を作ってみました(変わり種餃子)
ご覧いただきありがとうございます。餃子屋本舗 二代目の楠祐哉(@Kusunoki_Yuya)です。
このブログは私がひたすらに新餃子を作り続けるというコーナーです。しかし、お店で出すかは決めていません。いや、正直なところ、ほとんどはメニューとして並べないと思います。
『じゃあ、一体あなた何のためにやってるの?』と思うかもしれませんね。実は私もそう思って、理由を探し回ったらちゃんとありました。(え?)
私が変わり種餃子を作り続ける理由
私はこれまで様々な餃子を開発しました。
ポルチーニ茸と白トリュフの濃厚クリーム揚餃子(長い)やゴルゴンゾーラチーズと蜂蜜のクリーミィ揚餃子(これも長い)や、越冬ゆりねと天然大海老の椎茸あんかけ揚餃子(舌噛むわ!)などです。
実はこれらは全てアンケート調査で人気になったものを形にした餃子です。
「ポルチーニ茸のクリーム餃子」が上位に入ったときは目が点になりました。そう、アンケートの段階では私も味の想像しか出来ていません。
だから、結果がでたときは『こんなのどうやって作ればいいの』と天を仰いでいました。
世に無い「変わり種餃子」も何度も試作するうちに形になった
外はサクっ中はトロっと出てくる餃子って想像はカンタンですが、誰も作ったことはないですし、レシピはありません。
試しに、生クリームを使った緩めの餡で揚餃子を作ったら中身がトロっと出てくるんです。油に。口の中じゃなくて。そうなると中身はもぬけの皮です。
でも、めげずに何度も試作すると不思議と案外できるもので、いまや変わり種で一番人気のある餃子になりました。
こんな変わり種餃子が作れるのだと自分で驚いていた
そうして、新しい餃子を開発するたびに、餃子はもっと多様な味が作れるのだと感じていました。
出来もしないと思っていたものが形になると、これも作れる、あれも作れると想像が掻き立てられていきます。
でも、実際に店で出すことを思うと、価格やオペレーションを考えて諦めてばかりでした。というのも、私の作る餃子は手間がかかり過ぎるのです。
こだわりと言えば聞こえはいいですが、ただの頑固者。要するに面倒臭い人なのです。ここまで読んだあなたは既にお気づきですよね。
気の向くままに変わり種餃子を作る、売るかどうかは別
売ることは二の次。とりあえず好きに作ってみたらいいじゃない。そう思うようになったら気が楽になりました。
中には、こんなの餃子じゃないって言う人もいると思いますが、まぁいいじゃないと。私は個人の興味として、餃子の可能性が見てみたい。
ただ、私が色々作ってみたいだけ。美味しくて出せそうだったら売ります。そんな緩い感じ。その方が面白い餃子が作れますから。
それが、この企画をはじめた背景です。
牡蠣の味噌漬け餃子を作る
前置きが長くなりましたが、そんなこんなで、今回は牡蠣で餃子を作ってみました。
まずは牡蠣を味噌漬けにします。実はこのアイデアは知人のものです。良さそうだと思っていたらアンケートでは上位にこなかったのです。そうそう、こういうの作ってみたかったんです。
活牡蠣を買ってきましたよ。殻は自分で開けますよ。
剥き身や冷凍も売っているのですが、実はワタシ、あんまり牡蠣って得意じゃないんですよ。(なぜ牡蠣にしたのだ)だから、自分で食べるし、自分で食べるし、活牡蠣を買いました。
牡蠣の味噌床を作る
私が食べるだけなのでレシピは直感です。味噌床は赤味噌ベース、白味噌を少し加えました。
そこに牡蠣を開けた時の汁を濾してから日本酒と合わせたもの(火にかけてます)で味噌を伸ばします。この汁は和食ではあまり使いませんが、フレンチではよく使います。牡蠣のエキスが詰まっていますからね。
牡蠣は一瞬だけ湯にくぐらせて(霜降りといいます)、冷水に落として、水気を切って、味噌で挟みました。生姜の千切りも入れて、ニオイ消しに使いました。
牡蠣の味噌漬け餃子はナシだった
そして、翌日。餃子にして食べてみたら、残念ながらクサかった。それはそれはとても。いとくさし。
活牡蠣でこれかと思いました。しかも、牡蠣は大根おろしで丁寧に洗っているのにです。(和食の技ですね)
牡蠣が得意じゃない私は思いました。これは世に出してはいけないと。
でも、牡蠣自体は餃子に合っていました。ただ、コヤツ(味噌漬け)はだめだと分かりました。ちょっと、このままじゃ納得いかない。誰に食べてもらう訳でも無いのですが別の方向を探ります。
和食の魚料理に使う「幽庵地」に浸けて牡蠣餃子を再挑戦
次は、和食の幽庵地(ゆうあんじ)というタレに浸けようと考えました。たっぷりの日本酒で牡蠣の臭みを消そうという算段です。
牡蠣を買いに出たら、困ったことに活牡蠣がなくて、怪しくBBQ用と書かれている殻が開けられた牡蠣しか売っていないではありませんか。どうにも嫌な予感がしましたが恐る恐る買いました。
封を開けると案の定、強烈なニオイが放たれました。BBQ用の定義ってなんなんって怒りながらも、この臭みを消さなければ!という謎の使命感に駆られました。こうなれば戦いです。
ニオイとの戦いの果てに
同じように霜降りして幽庵地に浸けました。日本酒を入れた幽庵地と黒糖焼酎を入れたものの2種類を用意して更に臭みを取る工夫をしました。
気が進まないながらも焼餃子にして食べてみました。(だって苦手なので…)
すると一転、あれだけキツかった牡蠣臭が消えていた。酒は偉大だ。でも、牡蠣自体がイケてないので、ニオイが消えただけで美味しい訳じゃありません。
加熱するにしても素材の良さは大切なことを改めて実感しました。たまに言われるんです、餃子にもったいないとか。いえいえ、
酢牡蠣で食べたくなる衝動を抑えて
これじゃあダメだと、翌朝市場で直送されたばかりの活牡蠣を買いました。
そして、何を思ったか霜降りして生で食べました。人生初、食べて悶絶。恥ずかしながら、私はじめて牡蠣の魅力が分かりました。
思わず目の前にある牡蠣を全て平らげそうになりました。でも、ハッとしました。
忘れてはいけない。私は餃子屋さんです。餃子作らんと。この牡蠣を捌いて食べてたら、ただのおっさんの休日になってしまう。
母は酢牡蠣で食わせろと言いました
どうにか衝動を抑えて幽庵地に浸けました。そしたら、牡蠣が好きな母が出勤してきて言いました。
『美味しそうな牡蠣やんか〜、なんで置いといてくれへんのよ、酢牡蠣で食べたかったわ〜』って。
ちょっと待ちなさい、餃子屋の母。それはないだろうと。仮にも、あなたが創業者なのだから、餃子にしたのを食べさせてとウソでも言うべきじゃ…。いやでも、そうだよね。私も酢牡蠣で食べたいわ。
酢牡蠣に負けては牡蠣餃子に存在価値はないのでは?
気を取り直して、幽庵地につけて焼餃子にしました。
そしたら、臭みなんて全然ない。中はアツアツだしクリーミィ。幽庵地の味付けもバッチリ。おいしい、おいしい。けど、さっきの方が美味しい。やっぱり酢牡蠣の方が…..。ハッ。
いやいや、まだ終わったわけじゃないと蒸し餃子にしてみました。そして、フレンチでよくやる泡ソース(スダチ風味)を添えました。盛り付けも牡蠣の殻を使ってオシャレにしました。
食べると、おいしい、おいしい。うん、でも、さっきの方が美味しい。やっぱり酢牡蠣の方が……。ハッ。
だめだ!酢牡蠣の方がおいしい!
たしかに美味しい、とても。まぁね、素材がいいから当然ですよ。
でも、この餃子は牡蠣の良さを活かしきれていない。味はいいけど、牡蠣の最大の魅力である、生牡蠣のなんともいえない、とろっと溢れるジューシーさが失われています。
つまり、味付けの問題でなく加熱しすぎなのです。けど、餃子には器用な火入れなんて出来ません。
これはボツかと思ったのですが、ふと閃きました。レアな牡蠣餃子を作ればいいんだって。
頭にレシピがメロディのように浮かびました。次回はその餃子を作ってみようと思います。(もういい加減にしなさい)
餃子屋本舗 二代目 楠祐哉
この記事を書いた人
餃子屋本舗 二代目店主。中華料理店の長男として1986年に生まれ、幼い頃より厨房で遊びながら料理を覚える。元々はジャズのプロベーシストだったが、リーマンショックの影響で経営が傾いたことを機に跡継ぎに。音楽への情熱を餃子に全て注ぎ、自分だけの餃子を目指して日々奮闘中。頭に浮かぶのはメロディよりも味覚の方が発想豊かだと気づき、近頃は餃子が天職だと感じている。(Twitterでは試作の様子をリアルタイムでつぶやいています)